3月15日に再び塩尻を歩いてきました。前回行ってからほぼ40日後になります。蚕都上田の面影を色濃く残す塩尻地域は、何度も訪れてみたい場所です。
今回は前回歩いた東福寺下あたりから歩き始め、小岩井紬工房前の通りを18号と交わるところまで歩いてみました。このあたりは本当に素晴らしい。塀、建物の壁、石垣、水路。これほど魅力的な地域は他にそうないでしょう。すっかり魅せられてしまいました。18号に出てがっかりしたくらいです。
前回の「上塩尻 土塀の美しい町 1」でも強調しましたが、上塩尻の美しさを象徴するのは塀、特に土塀の美しさです。ところどころ剥げ落ちている部分もありますが、それがまた風格すら感じさせるのです。こういう感覚は海野宿でも茂田井宿でも感じませんでした。
塀と並んで目に付くのは石垣です。虚空蔵山の麓に出来た町なので、斜面を均すのに石垣がいたるところで使われています。石積みの技術に驚きます。一定の形に切り出したものではなく様々な形をした自然石を組んで行くのですから、大変な作業だったでしょう。合わせ目がぴたりと合って、隙間がほとんどありません。住民が力を合わせて作ったものもあるでしょうが、当時は専門の業者のような人たちがいたのでしょう。3枚目の写真はその石垣に取り付いた花です。青い花の色が目に鮮やかで、春を感じさせますね。
前回同様、今回も捨て写真はほとんどありません。こうやって様々な形の塀を眺めていると、石垣の上に塀を設けているところが多いのに気づきます。恐らく斜面に家を作っているので石垣を築いて土地を平らにしているのでしょう。石垣の天辺が庭の高さということでしょうね。その上に塀を設けないととんでもない 高さの塀になりますし、薄い塀では土地を支えられないということだろうと思います。2枚目の写真を見ればそれがよく分かります。上塩尻。石垣と塀の美しさを堪能できる町。そしてまたどっしりとした存在感のある町です。
この日たどった道自体が路地のような道でしたが、当然その道からいくつもの脇道が出ています。とにかく狭い路地が多い町です。
メインの通りばかりではなく、両側に立派な塀が続く狭い路地もまた魅力があります(3枚目の路地は岩井小路と呼ばれているようです)。脇道には入りませんでしたが、次に来た時にはそこにも入り込んでみたい。そんな誘惑が後を引く町なのです。
下の1枚目と2枚目は前回のシリーズでも撮った場所。しかしこのお邸は何度でも撮る価値があります。特に1枚目の光景は木の生命力のたくましさと、その木を切らずに残した心が見るものに迫ってきます。
3枚目は小岩井紬工房。比較的新しい建物と思われますが周囲の風景に合わせた造りになっています。海野宿ほど統一感はありませんが、石垣と土塀そして白壁の組み合わせが独特の町並みを形成しています。
18号に出たところでまた道を引き返し、今度は新幹線の橋の下までいってみました。新幹線の橋近くでは「ゆうすげと蝶の里」(「越畑ヒルズ」という別名もあるそうです)を発見しました。東屋を中心に周りに畑を作り、ゆうすげや様々な花などを植えています。まだ時期が早いので花は咲いていませんでしたが、東屋でゆっくり休憩させてもらいました。
ここは、地元の方たちが子供たちや地域の大人たちが里山に親しむきっかけとなる場所にしたいと願って作ったもののようです。東屋の背後の山裾に石垣を組んだ段々畑があります。そこは昔桑畑でした。その先人の残した遺産の一段目のゾーンを利用してツリーハウスを作る作業を始めているそうです。伝統の遺産を受け継ぎながら、そこに新しいで遺産を作ろうとする試みが始まっているのですね。このエリアがどんな風に変容してゆくのか楽しみです。
おまけに6枚の写真を追加しておきましょう。1枚目は「ゆうすげと蝶の里」裏の段々畑です。2枚目は東屋の周りに作られた花畑。花が咲く頃には蝶もやってくることでしょう。3枚目は2月に行った時に撮った写真。実にどっしりとした門構えです。
次の1枚目は一番上の写真の場所を別の角度から撮ったもの。次の2枚は東福寺近くの石垣と土塀。山裾の斜面に作られた町を象徴するような写真です。